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CSR情報は誰にとってマテリアル(重要)なのか

  • 2017.5.19

情報ニーズの“谷間”

コーポレートコミュニケーションにおいて、CSR関連情報(非財務情報)の開示は重要である。

法定開示情報を含めて、この事実に関しては誰も反対する人はいないと思います。

しかし逆に「そもそもCSR関連情報は読者に必要とされているか」という読者視点で考えるとどうでしょうか。CSR担当者であれば今までのCSR報告書やCSRウェブコンテンツのリアクションの大きさをご存知かと思います。

多くの方はこう思うでしょう。「必要とされていないかもしれない」と。

私も改めてそのあたりを考えるために、本記事ではGRIスタンダードとある生活者の意識調査を紹介したいと思います。

報告書の印象

■企業が発行する報告書の認知度は94%。「読んだことがある」が10年前の調査から34ポイント上昇
CSR報告書、環境報告書、IRレポート、会社案内、統合報告書など企業が発行する報告書について、「読んだことがある/読んだことはないが、そうした報告書の存在は知っている」が94%。「読んだことがある」(69%)は前々回調査(2006年度35%)から34ポイント、前回調査(2009年度58%)から11ポイント上昇している。

■報告書で印象に残った内容は、「事業内容(製品、サービス、技術)」「企業理念」「経営トップのメッセージ」
報告書で印象に残った内容は、「事業内容(製品、サービス、技術)」(55%)、「企業理念」(49%)、「経営トップのメッセージ」(45%)が上位。一方、「コーポレートガバナンス(企業統治、社外取締役のコメント)」(17%)、「従業員の声」(16%)、「リスクマネジメント」(14%)は1割台にとどまっている。

■報告書を読んだ後、「企業に対する理解・興味・関心が高まった」が62%とポジティブな印象
企業が発行する報告書を読んだ後、「企業に対する理解・興味・関心が高まった」が62%、「企業の商品やサービスを利用するきっかけになった」が35%、「企業に対する信頼が高まった」が29%と肯定的な印象に変化している。

引用『第20回 生活者の“企業観”に関する調査』(経済広報センター、2017)

ガイドラインへの対応

CSRにおける重要なコンテンツとは何か。また、それをどのように発見し(マテリアリティ特定)、情報開示すべきなのか。参考の一つとして、GRIスタンダードにおける報告の10原則を確認してみましょう。

◯内容に関する報告原則
1、ステークホルダーの包摂
2、サステナビリティの文脈
3、マテリアリティ
4、網羅性

◯品質に関する報告原則
5、正確性
6、バランス
7、明瞭性
8、比較可能性
9、信頼性
10、適時性

ちなみに、ここでいわれる網羅性は「情報の分量が多い」ではなく「マテリアルな項目を網羅しているか」という意味。

詳しくは「GRIスタンダード・日本語版」をご覧いただきたいのですが、専門家や評価機関はこれらの項目が重要だと思っているのでしょうけど、これらの項目をすべて満たしたコンテンツが「わかりやすいか」とか「ステークホルダーのリアクションを引き出せるか(エンゲージメントできるか)」は別の問題とも思うのです。

例えば、情報開示となると、GRIスタンダードの原則に従って開示をし、ステークホルダーとコミュニケーションしようとしても、実際はうまくいかないような気がします。

日本の社会情勢や消費者動向がガイドラインに反映されているわけでもないし、評価機関等の評価向上には貢献しても、本当に、多くのステークホルダーの評価に貢献できるのか、私にはまだわかりません。

さいごに

上記紹介の調査では生活者は企業のレポートなどを見ているということですが、当然ガイドラインへの対応だけで、読者に信頼感の訴求等ができるわけではありません。

生活者は企業のCSR関連報告書も読んでいるようですが、企業側の工夫が必要なのは言うまでもありません。

では、何を指標にCSRコミュニケーションやステークホルダー・エンゲージメントを行えばいいのか。

私たちとしては、その答えの一つとなるような枠組みを作っているところですので、今後の調査レポートをお待ちいただければと思います。

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執筆者:安藤 光展

CSRコンサルタント
専門はCSR領域のコミュニケーション、ステークホルダー・エンゲージメント、企業評価。著書は『CSRデジタルコミュニケーション入門』、『この数字で世界経済のことが10倍わかる〜経済のモノサシと社会のモノサシ』など。2009年よりブログ『CSRのその先へ』運営。大学卒業後、インターネット系広告代理店などを経て2008年に独立。以降、企業のCSR/社会貢献領域のコンサルティング業務を中心に活動中。1981年長野県生まれ。

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