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従業員の不満を「CSR課題」と捉えることのメリット

  • 2017.2.17

CSRに興味を持ってくれない従業員

CSR 担当者である筆者は、CSR に関する意識が従業員に十分に浸透しているかどうか、時々不安に駆られます。担当者の努力もむなしく、CSR にあまり興味を持ってくれていないといった悩みは、程度の差はあれど、企業の実務担当者なら少なからずあるのではないでしょうか?

情報が伝わらないのは、発信側、受信側の双方に問題があると言えますが、その中で考えられる主な理由は、“ニーズの不一致”と“信頼関係の希薄さ”の2点だと思います。

前者においては、発信側が相手にとって良かれと思って流した情報が必ずしも受信側の求めているものとは限らないという意味です。相手が「不必要だ」もしくは「重要でない」と思っていれば、そもそも取り合ってもくれないし、聞いてくれたとしても、きちんと理解してはもらえないでしょう。音楽に興味がない人にいくらクラシックの素晴らしさを一生懸命訴えたところで右から左に聞き流されてしまうのと同じです。

2つ目の“信頼関係の希薄さ”というのは、いくら良い情報を発信していても、相手に信頼されていなければ話を聞いてくれさえもしないということです。極端な例ですが、自分が信頼する上司の言うことは聞けるけど、嫌いな上司やなじみのない先輩の意見は端から否定的にとらえてしまったり、どこか絵空事のように思えてしまいますよね。それと同じで、知らない者同士の社員が集まって教育や研修が実施されても、受講側の従業員は、担当者の話にはあまり耳を傾けないでしょう。ただ時間が過ぎるのを待つだけの人もいるかもしれません。

Win-Win でない関係に先はない

ここで言いたいのは、会社側の意志を従業員に伝え、それをもとに皆で改善を進めていこうとした場合、まずは双方の思いを共有しなければならないということです。

お互いがWin-Winの関係だと、信頼関係が増します。信頼関係が構築されてお互いのことをより深く理解していると、大胆な提案を打ち出すことができるようになります。(家族や気心知れた友人との間では少々無茶な話が成立したりしますよね。あれと似た感覚です)。また、お互いを理解しているわけですから、より具体的で実態に合った取組みができたりもします。そして、うまくいけばそれが自分たち組織の独自性や優位性にもつながっていきます。逆に、お互いのことがわかっていないと、話がかみ合わなかったり、的外れな行動をとってしまうことになります。

聞くまで気付かなかった女性社員の悩み

つい先日、“ニーズの不一致”、“信頼関係の希薄さ”この2点の重要性を身に染みて感じたことがありました。

筆者が所属する会社は男性社員の比率が高い、いわゆる従来型の日本企業で、多分に洩れず女性のキャリア形成が課題になっています。そこで、当事者である女性社員の思いや意見を聞くために、女性のみのグループワークを開催し、働く上での課題について話し合ってもらいました。開始してすぐは皆硬い表情で制度や処遇などについて話をしていましたが、時間がたつにつれて身近なことへと話題が移って行きました。そして、最終的に出てきた結果は、思ってもみなかった意見でした。

実は、女性社員にとっての一番の不満は、「トイレが少ない」、「更衣室が狭い」といった職場環境(ハード面)にありました。会社は、研修や通信教育など、スキルアップに重点を置いていましたが、女性社員としては、それ以前に職場のインフラを整備してほしかったのです。これは当事者に聞かなければ知り得ないことであり、しかも気心の知れた者同士が話し合ったからこそ出てきた身近で切実な悩みでした。この“ニーズの不一致”を知った関係部門の責任者は、今まさに改善に向けて対策を検討しているところです。

まずは「場」を設けること

上位から打ち出された CSR に関する施策は、必ずしも最初から的を射たものとは限りません。より実効性の高い施策に落とし込むためには、先の女性活躍のグループワークのような取り組みが必要になるでしょう。また、普段から抱えている個人の不満や意見をCSRの課題に結びつけることで、問題をぐっと身近に引き寄せ、自分事として認識することができます。

たとえば、筆者は、冬の時期の事務所は寒いと感じていましたが、これを“働きやすさ”(労働慣行)の問題として捉えることもできます。また、世間に目を向けると、「制服は女の子扱いされてしまって嫌だ」とういう声もあるようですが、これも考えようによっては“ジェンダー平等”(人権)の問題と言えます。

つまり、個人的な不満・悩みは、実はCSR的課題でもあるのです。そしてそれは、身近に転がっています。この身近に転がっている課題をグループワークやディスカッションなど、CSR課題に昇華させるための話し合いの場を設けることこそが、筆者らCSR担当者にできることではないでしょうか。このささいなことを改めて見直す活動がひいては全員参加型のCSR活動に繋がっていくのだと、私は思います。

寄稿:Takada Yuriko

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執筆者:ブログ編集部
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