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CSRコミュニケーションはデジタルとアナログどちらがいいのか

  • 2017.1.18

加速する企業のデジタルコミュニケーション

今は、欲しいモノを買うのも、旅行で泊まるホテルを予約するのも、ウェブ上ですべて行える便利な世の中になりました。

また、FacebookなどSNSがあれば、わざわざ住所録をひっぱりださなくてもリアルタイムで昔の友人や知人の近況を知ることができます。ウェブの進歩によってダイレクトに、しかもリアルタイムでコミュニケーションができるようになったわけです。こういった時代の変化に伴って、企業の情報開示やステークホルダーとのコミュニケーションの方法も変わりつつあります。

企業のCSR報告に関する調査(東洋経済新報社)によると、調査対象1,159社の中で紙のみでの実施が30社、ウェブのみが347社、紙とウェブとの両方が623社と、ウェブの利用が約80%となっています。つまり、CSRにおいてもウェブを利用したリアルタイムでのコミュニケーションが当たり前になっていると言えます。実際、大企業の多くは、随時自社のホームページ上で CSR 活動の報告を行っています。

デジタルコミュニケーションにばかり気を取られてはダメ!

先述の通り、今はたいていのことがウェブで対応できます。筆者自身、プライベートでも通販やSNSを利用しますし、仕事においても社内向きにはイントラネット、社外に対してはメールやウェブシステムを活用しています。これを読まれているみなさんも似たような状況ではないでしょうか。

このように、ウェブの発達に伴い、ウェブを介してのコミュニケーションがますます幅を利かるようになりました。その一方で、この流れ取り残される、いわゆる「情報弱者」が生まれていることを情報発信する側は知っておく必要があります。情報弱者は、年配者や低所得者、何らかの理由でネット環境を絶たれてしまった人になどに多いと言われています。

ちなみに日本人口における60歳以上の人数割合は現在44.8%。年代が上がるにしたがってウェブ利用率は低下する傾向にあるので、発信者側が社会に対して公平に提供しているつもりでも、果たしてどこまでの人たちに伝わっているのかは疑問です。 
 

独りよがりな情報発信は身をほろぼす

実は筆者、中学から大学まで和楽器の筝を10年ほど習っていました。社会人になってからは遠ざかっていたのですが、最近また再開ました。箏(こと)の曲というのは「現代曲」「古曲」の2つに大別できます。

現代曲は、テンポが速くメリハリの利いた激しいものが多いのですが、古曲は一音一音を際立たせるゆっくりした曲で、現代曲とは対極にあります。弾き手からすると、技量が問われ弾き応えがある古曲に筝の醍醐味を感じるのですが、筝初心者の方々にはテンポが良い現代曲の方が親しんでいただけるようです。

なので、大学時代の学生主体のクラブ活動では、聴衆の趣向に合わせて演奏会やイベントで披露する曲を変えていました。箏の専門家や師範が来るような場では難易度の高い古曲を、老人ホームや留学生が集まる場など箏を、また、あまり知らない人たちに対しては、楽器の説明や曲が作られた時代背景などを紹介し、聴衆の興味を惹くような段取りを踏んだ上で、軽快で迫力のある現代曲を演奏しました。

PRと思ってここぞとばかりに古曲を弾いてしまうと、弾くほうは楽しいでしょうが、聞かされる相手は拒絶感しか残りませんから。

アクセス数だけに気をとられるCSR担当者は要注意

筝を例に出しましたが、ここで言いたいのは情報発信する側の伝えたいことが受け取る側の求めているものとは必ずしも一致しないということです。「このステークホルダーにはこの方法で伝えるのが一番!」と、発信側本位で勝手に決めたとて、思惑通りにいくわけではありません。この認識を筆者含め、CSR担当者は常に持っておくことが必要です。ウェブに不慣れな人に対していくら興味深い情報をウェブ上で提供しても、目に触れる機会すらないことだってあるのです。

ついつい、情報発信側は自社の取り組みを効率的だからという理由でウェブで大量に配信しがちです。そして、アクセス数を見て一喜一憂します。もちろんアクセス数は社会へいかにPRできたかの有効なバロメーターにはなります。

しかし、受け取る側に「理解してもらう」こと、つまり相手の共感を得ることも長期的な視点においては重要です。取組みに共感してもらうのであれば、まずは情報の届け先を明確にして、その対象がどのような人たちかを知ることが必要です。その上で、相手に応じた伝え方を工夫することが求められます。

相手に応じてデジタル、アナログを使い分けることが大事

とは言え、投資家や就活生の多くはスマホなどを使ったウェブ上での閲覧をメインにしています。一方、地域え民など一般の人たちは、企業の地域への取組みをホームページで掲載したとして、果たしてどれだけの人が見てくれるでしょうか?

ステークホルダーからの共感を得ながら皆と一緒になって社会をより良くすることが企業の社会的責任だとするならば、通り一遍等のやり方で伝えるのではなく、顔を合わせての交流会や意見交換会、活動報告会など、アナログなコミュニケーションが功を奏するケースもあります

現在筆者が勤めている会社では、コンプライアンス教育やCSR情報の発信をイントラネットを通じて行っています。しかし、先日、一部の部門に対して講習会形式で行ったところ、実施後のアンケート調査そのものの回答率が、ウェブの場合だと70%台だったのに対してほぼ全員から回答を得ることができました。また、従来は20%しか返信がなかった意見や感想も、講演会後では60%近くありました。一方、理解度についてはデータにおいて差はありませんでしたが、講演会の最後に設けた質疑応答の時間を通して、数字には表れない感覚的な手ごたえも参加者の声色や表情から感じとることができました。

ステークホルダーへのコミュニケーション方法は今のままで問題ないでしょうか? デジタルコミュニケーション、アナログコミュニケーションそれぞれの利点を生かし、より最適な手法を用いることで訴求対象とのよりよい関係を作って行くべきではないでしょうか?

CSR担当者として、今一度コミュニケーションのやり方を見直すことも、必要になってくるでしょう。

寄稿:Takada Yuriko

<参考>
平成28年度 情報通信白書 総務省
東洋経済新報社「第12回CSR企業調査 CSR格付一覧」
総務省統計局「人口推計」

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執筆者:ブログ編集部
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