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「8%」から見えてくる企業の取組むべき課題とは?

  • 2016.12.20

性的マイノリティ

「8%」。この数字を見て何を思いますか?

これは「自分は『LGBT』だと自認している」人の割合なんです。

ちなみに、“LGBT”とは、L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダーといった、性的少数派の人たちのことを指しています。みなさまはどうでしょう。多いと思われますか? 少ないと思われますか?

別の数字で比較してみましょう。0~9歳の人口が日本の総人口の「8%」です。つまり、この数字は赤ちゃんから小学4年生の子どもたちと同等の数なのです。そう考えると「決して少なくはないんだな」というのと同時に、それほどの数であるにもかかわらず、今まで無頓着で過ごしてきたことにショックを覚えたというのが、筆者の正直な感想です。

抱える悩み

LGBTの人たちは、性別で大別されることに想像以上に大きなストレスを感じているのではないでしょうか?

社会での認知度が高いとはいえない状況では、少数派は常に弱者となる危険性と隣り合わせです。好奇の目で見られ、ときには後ろ指をさされたり、いじめの対象になることも想像できます。また、そうならないように注意深く振舞うこともストレスになるでしょう。 実際、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチも「日本政府がLGBTのこどもを学校のいじめから保護できていない」と2016年5月6日発表の報告書で指摘しています。

日常生活においてはどんな悩みがあるでしょうか。自分の親や友人に相談できない人もいるでしょうし、自分の性に違和感を感じていれば、トイレや制服、更衣室など、または最近流行りの「女子会」なども人によっては辛さを覚えることがあるかもしれません。駅で電車を待っていて、目の前に女性専用車両が止まるときも然りです。いやがおうでも自分の性に向き合わざるを得ない状況に陥ったりすることになると思います。

変わりつつある日本の労働市場

ここで、少し視点を変えて、日本の指針を考えてみましょう。

安倍首相は「一億総活躍社会」を提唱しています。この「総活躍」というのは、男性、女性、高齢者、障がいをもった人たち、外国からの移住者、そういったすべての人を対象にしています(女性活躍推進法もこういった背景のもとにうまれた法律です)。

そして、そもそも「総活躍」が言われるようになった背景には少子高齢化から見えてくる労働力人口の減少問題があります。少子化とは、文字通り出生数が低下してきていることを指します。一方、高齢化は64歳以上の人口が増えることです。少子化はなんとなく労働力との関連のイメージがわきやすいですよね。高齢化に関しては、労働力とどう関係があるかが見えにくいかもしれません。

団塊の世代を親に持つ人たちは、これから介護に時間が取られます。つまり、40代から50代の、いわゆる企業においてはマネージャークラスの人たちが介護に時間をとられる可能性が高いということなのです。となると、子どもは増えない、また介護による人手不足で、このままでは社会全体の労働力が上がらず、人口減少に伴う経済縮小に歯止めがかからないといった事態になるでしょう。

これからは、男性・女性という枠組みではなく、先に述べた障がい者、高齢者など、この社会で生きるすべての人で国の経済を維持・向上しなくてはならなくなっているのです。また、社会の成熟とともに労働の質も変わりつつあって、かつては男性にしかできなかった仕事も今や広く門戸が開かれています。つまり、こういった変化は労働における老若男女の壁を崩し、やる気や能力さえあれば誰でも活躍できる社会の実現にもつながっていきます。

企業としてしなくてはならないこと

こうした日本の将来の“見えている課題”にいち早く気付いた企業は、会社の体制を見直したり、新たな取組みを進めています。

大手電機メーカーのパナソニックでは、2016年4月に就業規則をLGBTに配慮した内容にいち早く改定しました。その後も楽天をはじめこの流れに追従する企業が徐々に出てきています。

また、旅行業界ではPINKがLGBT向けのツアーを企画したり、性的指向に寛容なホテルや国への旅行プランを考えたりなど、顧客ニーズを満たすためのサービスを展開しています。また、保険業界においては、ライフネット生命保険が先陣を切って、2015年10月に同性のパートナーを死亡保険の受取人に指名する手続きを緩和しました。

これまでは、保険金の受取人は異性のみが認められていましたが、2015年4月から東京都渋谷区で施行された「同性パートナーシップ条例」ができた動きに合わせ、同社は同居を証明する住民票などを提出すれば、同性のパートナーも受取人として認めることとしました。

このように、LGBTを新たなビジネスチャンスととらえ、今までになかった LGBTに向けたサービスが社会に提供されはじめています。狙いはどうあれ、これらの取り組みは、同時にLGBTの認知度を上げることにつながっているように思います。

企業の使命は持てる経営資源を駆使して社会の発展に貢献することです。なかでも「人」というのは重要な経営資源の1つです。すべての従業員が思う存分能力を発揮できる職場、趣味や趣向で判断されずやる気や能力によって公平に評価される職場、そういった職場を作っていくことが、企業経営や社会発展には必要でしょう。

性的指向は経済活動には直接の影響はありません。企業のCSR担当者の筆者としては、具体的には、LGBTの人たちとの対話すること、もしそれが難しいのであれば、人権問題を扱うNGOやNPOに関わり、少しでも視点を近づけて、得た情報を整理して従業員に伝えていく取り組みが必要になるのではないかと考えています。

つまりは、社会の状況を社内のすべての人に知ってもらい、決して他人ごとではなく、自分ごととして理解してもらうということです。社内報にLGBTに関する記事を載せること、従業員またはサプライヤーなどに対してダイバーシティ教育を行うこと、従業員同士のLGBTに関するディスカッションを行うなどといった取り組みを通して、少しでも多様性を受け入れる企業にしていくことが、企業のCSRには大事になってくるでしょう。

寄稿:Takada Yuriko、編集:安藤光展

<参考>
日本労働組合総連合会「LGBTに関する職場の意識調査」
総務省統計局「人口推計」
ヒューマンライツウォッチ「日本:いじめに遭うLGBTの子どもたち 保護されず」
日刊工業新聞「保険業界でLGBTの対応商品広がる」
PINK
東京新聞「 LGBTに配慮したトイレを東京五輪見据え設計助言」
渋谷区「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」
パナソニック「人材育成・多様性:LGBT(性的マイノリティ)に関する取り組み」
楽天「楽天、社内規定における配偶者の定義を改定」

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執筆者:ブログ編集部
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