最新記事

【第19回】過去の失敗から考えるSDGsコミュニケーション

  • 2018.4.29

CSRコミュニケーション協会のアドバイザーを務めます猪又です。このブログでは、「CSRデジタルコミュニケーション入門」に書かれている内容の補足や分量的に追加できなかった内容を含めて、日々感じたCSRコミュニケーションについてお伝えします。

4月も始まって1ヶ月経とうとしていますね。CSR部に異動してきた方は、ようやく落ち着いてきましたか?私事ですが、今月は企業研修で北は北海道から南は佐賀まで全国各地を駆け巡り、プライベートでは雨の中、フルマラソンに出走したりと、もっとも過酷な4月でした(笑)その研修の中で、ある上場企業の経営者や部長向けにSDGsの基礎セミナーを行ったのですが、今回、改めて最近盛り上がっているSDGsコミュニケーションを考えてみましょう。是非、異動してきた方もご参考にしてみてください。

CSRが浸透しなかった理由

先日、グローバルコンパクト・ネットワークジャパン(GCNJ)と公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)との共同調査レポート「未来につなげるSDGsとビジネス~日本における企業の取組み現場から~」が発表されました。その調査では、経営者でのSDGsの認知度が36%と前年度よりも8%増加しているのにもかかわらず、経営と現場を繋ぐ中間管理職の認知度が前年度から4%増加の9%とほとんど浸透していない状況です。逆に、CSR担当者の認知度が86%と比較すれば、その温度差が分かってもらえるのではないでしょうか?私もCSR業界にいて約10年経ちますが、社内浸透の課題は2003年のCSR元年と言われた時代から、今に至るまでほとんど変わらない状況です。なぜ、CSRが社内に浸透しなかったのでしょうか?SDGsもこのままいくと同じようなことにならないか心配しています。改めてCSRコミュニケーションの失敗理由を振り返ってみましょう。

理由1:経営者が本気ではなかった

CSR部と言われると、社内でいえば、環境部が起点となって出来た企業も多く、また、企業の内部監査の一つとしてコンプライアンス遵守を目的に部署を立ち上げた企業も多かったようです。今ほど企業不祥事がオープンになることが少なかった時代では、経営者からみれば、正直それほど重要視している部署ではなかったのだと思います。また、他部署からは、色々と文句を言ってくる部署として、あまり良い印象を持たれていないと感じる方も多いのではないでしょうか。その点、SDGsは事業との関係性も強いこともあり、経営者にとっても積極的に取り組もうという意識を感じられます。やはり、経営者の意識によって社内浸透の差が大きくなるわけです。前述の調査では、経営者の理解も進んでいることを考えると、社内浸透しやすい環境になってきていると思われます。

理由2:中間管理職が自分事として捉えられない

しかし、経営者意識が変わっただけでは社内への浸透はできません。CSRが浸透しなかった理由として、社員が自分事として捉えられなかったことも大きかったと思います。特に、中間管理職への浸透が大きな要因です。経営者が意欲を持っていても、現場を管理している中間管理職がその意志を強く持って実践しなければ現場への浸透が出来ないのです。最近は、製造メーカーでの企業不祥事が続いていますが、やはり、経営と現場での乖離が原因のようです。結局、現場からすれば、CSRへの取り組まないリスクというのが全く理解されていなかったのだと思います。例えば、営業部であれば、今後、取引先のCSRリスクによって取引が突然出来なくなったり、調達部であれば、環境リスクにより調達コストがあがることなど、自分の業務に置き換えて話をしてくれないと、その意義を感じられないはずです。前述の調査結果から、SDGsもCSRと同様に中間管理職への浸透が大きな課題となっているようです。この部分をいかに理解してもらうのかが、CSR担当者が実施すべき最優先課題になってくるでしょう。

理由3:業界特有の3文字英単語が難しい

更に、CSR浸透を阻んだのが、業界特有の言葉です。CSRもそうですが、ESG、CSV、GRI、PRIなど、こういった表現はCSR業界の方々同士ではもちろん通じるのかもしれませんが、一般社員からすれば全く認知されていません。というか、興味もないといった方がいいかもしれません。大切なのはキーワードを覚えることではなく、身近な事例を持って分かりやすく説明するのかが大事になってきます。企業内でのSDGsの活用方法としてSDGsコンパスでも、まずはSDGsの理解ということが書かれています。SDGsの17の目標、169のターゲットを覚えるのではなく、まずは、今後の自社の持続可能な企業を目指すためのツールとして活用するために、社員理解を促進することが益々大切になってきます。

SDGsコミュニケーションで成功するためには

今、振り返ってきたように、CSRが浸透しなかった理由を反面教師として、SDGsコミュニケーションに取り組まなければ同じ轍を踏むことになるでしょう。

社内コミュニケーションツールとして活用する

これはあくまでも個人的な見解ですが、SDGsは社外よりは、社内でのコミュニケーションを円滑にするために役立つツールではないかと考えております。その理由として、社外コミュニケーションでは、自社の事業が17の目標のどの課題解決に向けて取り組んでいるのかを示すストーリーテリングの要素が強くなることが多く、企業にとって本当に大事なのは、SDGsというゴールが示されたことによって、そこに至る新規事業や社内・社外連携などの新しい動き方をしていくことが本質的だからです。以前のように、経営企画や事業企画が今後の企業の方向性を考えたことを現場で擦り合せて合意形成をしていくことではなく、今後は、経営者、中間管理職、現場スタッフ一同がSDGsを通じて、今後のビジネスを考えていくような時代へと変化していくことが持続可能な企業を創っていく礎になってくることでしょう。そのためには、SDGsに積極的に取り組むことは非常に効果が高いと思われます。

まとめ

今月の話はいかがでしたでしょうか?SDGsコミュニケーションは、社内へのコミュニケーションツールとして活用できることをご理解いただけましたでしょうか?表層的なSDGsコミュニケーションを繕っても現場に浸透していなければ、絵にかいた餅になってしまいます。最近、世間を騒がせている企業も、一見するとCSRやSDGsをしっかりとやっているように見えますが、実際のところ、現場までには行き届いていないようです。是非、企業価値向上とリスク低減のために、社内コミュニケーションから始めてみませんか?

さて、去る18日ですが、第一回CSR企業評価研究会が開催されました。私もその日は大阪で出張があったのですが、すぐに戻ってきて参加いたしました。参加されている企業のCSR担当者の皆様の熱意を感じることができて、とても有意義な時間を過ごさせてもらいました。今回のテーマであるSDGsコミュニケーションもそうですが、日頃気軽に集まる横のつながりができることを目的にしています。是非、第二回も6月に開催される予定ですので、ご参加してみてください。

※本投稿は個人の見解であり所属する組織・団体を代表するものではありません。

特典多数な正会員制度の詳細はこちら

執筆者:猪又 陽一

東京商工会議所「eco検定アワード」審査委員、2016年第三者意見執筆企業(南海電鉄、アマダホールディングス、リケンテクノス)。早稲田大学理工学部卒業後、ベネッセコーポレーション入社。その後、外資系ネットベンチャーやリクルートエージェント等で新規事業立ち上げ後、大手環境戦略コンサルティング企業に合流。環境・CSR分野における戦略・実行、コミュニケーション、教育など幅広く従事。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」、「CSR JAPAN」をプロデュース。著書:『CSRデジタルコミュニケーション入門』(インプレスR&D、共著)

関連記事

記事・コラム

  1. CSR/サステナビリティの報告書制作2010年代以降、CSR/サステナビリティ報告書(統合報告書...
  2. CSRコミュニケーション協会のアドバイザーを務めます猪又です。
  3. 第2回CSR企業評価研究会CSR企業評価研究会は、CSR/サステナビリティ企業評価を研究し、企業...
  4. 2018.4.2

    コミュニケーション

    CSR報告における“読み物”の価値と関係性
    ステークホルダーの興味関心昨今の統合報告書のアワードで上位に入る企業の特徴で“読み物の充実”とい...
  5. CSRコミュニケーション協会のアドバイザーを務めます猪又です。
過去の記事

出版・資料室

CSRデジタルコミュニケーション入門

CSRデジタルコミュニケーション入門

現代のCSRについて、どなたにも読みやすく、理解しやすく、そしてすぐに実践できる内容としてまとめられた一冊です。