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CSR/サステナビリティの報告書制作における3つの視点

  • 2018.5.2

CSR/サステナビリティの報告書制作

2010年代以降、CSR/サステナビリティ報告書(統合報告書)は上場企業・未上場大手企業を中心にずいぶん浸透してきました。すでに年次報告として何度か発行している企業では「次の一手」として、その品質向上や、ツールとしてステークホルダー・エンゲージメントに活用することを目指す企業も増えている印象があります。

その報告書ですが制作にあたって内製しているという企業はかなり減りました。少し前にはBtoB、BtoC問わず 内製する企業があったのですが、外部の制作会社の方が知識・実績もあり(?)、どうせ発行するなら外注しようということなのでしょうか。

そんなこんなで多くの企業で“ちゃんとしたCSR報告書”を作り始めたものの、成果や企業評価向上につながっている感触がない方も多いと思います。では企業担当者はどうしたらよいか。

本記事では、当たり前だけど見過ごされている、CSR報告書の制作の意義にもつながる3つのポイントを紹介します。3つのポイントとは「マテリアルな開示情報」「“伝わる情報”を伝える」「目標管理」です。以下で解説します。

1、マテリアルな開示情報

そもそもCSR報告書(統合報告書)は、なんのために発行しているのでしょうか。発行のきっかけは、ステークホルダーのニーズに応えるというより、競合が発行しているからとか社長の思いつきとか、理由は色々とあると思われますが、その本来の目的は明確になっていますでしょうか。

極論ですが、CSR報告の存在意義は「主要ビジネスモデルのCSR/ESG課題(リスク)を特定し、その対応を経営戦略の中にどう取り込んでいるのかを説明する」ものであるということです。CSRの考慮は負の外部性 (環境・社会問題等)を最小化し、市場全体のサステナブルな成長に不可欠なためです。

簡単にいえば、マテリアリティの開示とその対応について網羅的に開示しましょうね、という話です。ここで問題なのが制作会社の方のほとんどは、CSR活動のコンサルティングの経験がないので、制作物以上の話はまずできませんし、ツールをそういう用途で制作をできません。(制作会社は制作のプロでありコンサルではないのは当然ですね)

ですので、お金を払うかどうか別として、第三者の専門家に意見を求めて、ステークホルダーの情報ニーズからはずれていないか確認しましょう。これ、以外にできていない会社多いです。で、全てとは言いませんが、している会社はCSR/IRの評価が高い傾向もあります。(当社調べ)

2、「伝わる情報」を伝える

もう散々語り尽くされてますが、それでもできていない企業が多い「ストーリーテリング」の問題があります。ちゃんと“伝わるように”伝えようよ、という話です。

「伝わる」のは相手が聞きたいことだけです。興味がない、聞きたいと思わない情報を能動的に収集することはまずありえません。

CSRとか国際的ガイドライン対応とか、99%のステークホルダーは知りません。CSR担当者でさえリテラシーがない方が多いのに、世間一般の方が詳しいわけがない。ということは、CSRやサステナビリティという単語を使わず、また自社のことを詳しく知らない人たちに、自社の環境・社会的側面を伝える必要があると。情報を届けたいなら相手の使う「言葉」を使いなさい、ってことです。綺麗なコピーライティングをすることが(少なくともCSRの文脈では)ストーリーテリングではありません。

3、目標管理

御社は、CSR報告書およびCSRウェブコンテンツの運用で「達成すべき成果(KPI)」は決まっていますでしょうか。当然目標にするということは、それは測定ができ、その数値を高めることによってゴール(KGI)の達成に貢献できるものになっていますよね?

CSR活動の目標設定は「SMART」というフレームワークは使いやすいと思います。解釈は色々ありますがだいたい「SMART(具体的で、測定可能で、達成可能で、事業と親和性が高く、期限が定められている)」という趣旨で活用されます。このフレームワークにそって作るだけで、なんとかなりの精度の目標設定ができます。

ただし、注意が必要なのが「コンテクスト(背景)」です。抽象度が高いCSR活動では目標設定は非常に難しいタスクです。なぜ難しいかというとコンテクストを考慮しないため間違った設定になりがち、というわけです。

まず目標を決めるには現状分析をします。ここを飛ばす企業担当者やCSRコンサルタントの方が多いので困ったものです。「そもそも、なぜこの目標が必要なのか」という必然性が設計できなければなりません。その目標を達成するために、ツールとしてどのようにCSR報告書を作るかという、バックキャスティング思考ができることがベストです。

ここまで、3つのポイントとして「マテリアルな開示情報」「“伝わる情報”を伝える」「目標管理」を紹介しました。他にも重要な要素はたくさんありますが、まずはこのあたりに注目すると「今より一手先のCSR報告書」が作れる可能性が高いです。ぜひ参考にしてみてください。

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執筆者:安藤 光展

CSR/サステナビリティ・コンサルタント
1981年長野県生まれ。専門はCSR/サステナビリティ経営、ステークホルダー・エンゲージメント。2009年よりブログ『CSRのその先へ』運営。著書は『創発型責任経営』(日本経済新聞出版社)『CSRデジタルコミュニケーション入門』(インプレスR&D)、『この数字で世界経済のことが10倍わかる』(技術評論社)など。

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