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「CSRは大事だ」と口先だけでものを言う経営層を変えるための工夫とは?

  • 2017.10.18

前時代的な発言をする経営層

「自分たちができていることだけを公開すればいい」
「できていないことまで報告しても企業価値を下げるだけだ」

上記は、CSR報告書を制作する際に実際に聞いた言葉です。

これまで、社内講演会や、ニュースレターを通して、昨今のCSRの動向や社会の動きについて何度もなんども説明してきたのですが、伝わっていなかったようです。確かに、数年前までは、企業の情報開示といえば、メインターゲットは投資家でした。なので、IRや有価証券報告書といった業績、つまり「結果」を一定の時期に定まったフォームで報告すれば、企業は説明責任を果たしたとみなされてきました。

こういった時代を生きてきた人であれば、「法律やルールに義務付けられていない情報をわざわざ載せる必要はない」という風に思うのもわからなくもありません。しかし、今はもはやそんな時代ではないと、CSR担当者としては声を大にして言いたいものです。

自分の知らないところでいつのまにか評価される時代

昨今、CSRに関するルールやガイドラインが立て続けに発行されています。ISO26000、GRIスタンダードなどはその代表例です。また、先日はSASBが業界ごとに報告すべき項目に関するガイドラインを発表しました。

これ以外にも、企業が適性かつ倫理的な事業活動、つまりCSRに配慮した事業活動ができているのかを評価・監視する仕組みも打ち出されています。EICC、Sedex、Ecovadisといった従来からのものに加え、大手コンサル会社のアクセンチュアが企業の将来性を計る独自の指標を設定したりしています。

このことからも、企業に対する目が日増しに厳しくなってきているのがわかります。つまり、業績の報告だけでなくその業績のバックボーンとなる非財務情報の開示も求められているのです。非財務情報というのは、言い換えると、CSR/CSV活動に関する情報になります。つまり、企業は、自分たちの社会に配慮した取り組みを適切に公開しなければなりませんし、社会の目に晒されても耐えうるだけのクリーンな会社となることを強いられることになるのです。

こういったことからも、冒頭でお話した、「自分たちができていることだけを公開すればいい」、つまり、「都合の悪いことは隠そう」という考えが、いかに前時代的なものかというのがわかります。社会は、自社がCSRのあらゆる課題に対して取り組んでいようがそうでなかろうが、容赦なく開示を求め評価するのです。まるで社会が企業の人生を決めてしまうかのようですね。

介在プロセスが多いほど、自分ごとに落とし込めない

CSR担当者はこの状況を目の当たりにし、社内に向けて情報発信を行います。経営層やしかるべきポジションの人たちに対して世の中の流れ、企業に迫りくる危機や生き残りをかけた取り組みが必要であることを何度も説明した人も多くいると思います。しかし、いくら訴えても馬耳東風。

CSR部門の人が集まる場でも、こういった話はよく出ます。「まったく聞き入ってもらえない」と頭を抱える人も少なくありません。この問題は、程度の差はあれ、多くの担当者が抱える悩みだと思います。

先月、筆者が企業倫理の講演に参加したときの話です。講和の中で、「トロッコ列車のジレンマ」が紹介されました。簡単に概要をお話しますと、こちらに向かって走っているトロッコ列車の軌道を変えるレバーを引くことで、1人の命と引き換えに5人を救える(引かなければ5人が犠牲になり1人が助かる)といった場面では、多くの人が「レバーを引いて5人を助ける」という選択をしますが、歩道橋の上から人を突き落とすことで列車を止め、その結果5人を助けることができるといった場合では、その選択にほとんどの人が賛同しない、といった話です。

ここで言いたいのは、「意思決定」とそれによって起こる「行動」との間に介在するプロセスが多ければ多いほど、“自分ごと”としてではなく“他人事”としてとらえてしまう、すなわち意思決定において当事者意識が薄らいでしまうということです。

よりダイレクトなコミュニケーションに取り組みましょう

当事者意識が薄い、世間の流れを知りつつも、さも他人事のように振舞う、過去の慣習が通用しないことをまるで理解しようとしない。こういった背景には、「トロッコ列車のジレンマ」の例でもあるように、情報到達までに多くのプロセスが介在していることが考えられるのではないでしょうか。

どこかの講演会で、CSR担当者がプレゼンターを通して社会の動向を知り、そこでもらった資料をもとにセミナー内容を上司に報告し、そして上司が経営会議用の資料を準備し、それを事業部長経由で経営会議の中で「これからはCSRです!」と訴える。これでは、資料は経営層の手元に届いても真意は伝わりません。

人の認識は、文字よりも実際に目で見る、経験するほうがより深まると言われています。実際、ネットの世界もブログからインスタグラムに流行が移りました。Youtubeの勢いもとどまることを知りません。経営層やしかるべきポジションの人たちに当事者意識を持ってもらうためには、なるべくダイレクトに、しかも視覚や感覚に直接訴えかける試みをしてはどうでしょうか。

たとえば、有識者、経営層、関係部門数名での小規模でのダイアログの開催や、地域住民やNPOなどを招いてのパネルディスカッションに経営層を巻き込んで社会の持続可能性についてワークショップをするなど、やってみる価値はあると思います。筆者を含め、CSR担当者の皆さん、経営層攻略に向けてがんばりましょう!

寄稿:Takada Yuriko

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執筆者:ブログ編集部
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