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【第12回】企業の社会貢献活動はESG投資に影響があるのか?

  • 2017.9.29

CSRコミュニケーション協会のアドバイザーを務めます猪又です。このブログでは、「CSRデジタルコミュニケーション入門」に書かれている内容の補足や分量的に追加できなかった内容を含めて、日々感じたCSRコミュニケーションについてお伝えします。

先々月は、ESG投資にとってあまり重要と思われていない「E」である「環境の取り組み」についてお伝えしましたが、今月は、環境と比較しても企業のオリジナリティを出しやすく、ブランディングにも繋がる「Social」の「S」の部分である「社会貢献活動」について考えていきたいと思います。各企業のホームページをみると、今だに、CSRは、「震災復興支援のための寄付」や「地域のボランティア活動」と勘違いされている企業も少なくないようです。そんな社会貢献活動とESG投資の関係について考えていきましょう。

環境と比較すると社会貢献活動は数えきれない

企業が実施している社会貢献活動は、環境の取り組みと違って数え上げたらきりがありません。取り組んでいるテーマも企業によって様々で、貧困、健康、人権、地域貢献、復興支援、ダイバーシティ、スポーツ支援、などなど。そんな数ある社会貢献活動を投資家はどう見ているのでしょうか?また、そのような取り組みは、ESG投資に影響を与えるのでしょうか?

(1)機関投資家の見る目が変わった!?

次のグラフは日本取引所から報告されているレポート内のデータです。金額別の投資家比率を示しています。

(日本取引所グループホームページからレポートから引用:http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/nlsgeu000002ini6-att/j-bunpu2016.pdf

グラフをみてお分かりだと思いますが、海外からの外国法人、銀行、保険などの金融機関、個人投資家が多い状況です。一概に投資家といっても、機関投資家と個人投資家では全く考え方が変わってくると思います。機関投資家は、やはり投資のプロということもあり、様々な客観的なデータから今後の将来性を判断して投資しているわけです。企業が実施している社会貢献活動も数あるデータの中の一つと捉えるはずです。

例えば、次のような企業があったら、どちらに投資しますか?

①毎年純利益が減っているが、社会に貢献している企業
②毎年純利益は増えているが、社会にも社員にも優しくない企業

ESGという考え方がない時代には、財務諸表のみの判断になるので、おそらく②のような利益をつねに生み出す企業に投資するはずです。ただ、2015年に世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立法人(GPIF)が、国連の責任投資原則(PRI)に署名し、ESG重視を表明してから、日本でもようやく注目され始めました。2016年はESG投資元年と言われるように、企業の環境や社会の取り組みを非財務諸表として評価される時代になってきています。どういう指標がESG投資に影響を与えるのかは証券会社のプロにお任せするとして、分かりやすくいえば、①のような企業にも投資面で支えられるようなセーフティーネットが出来てきていると言えるのではないでしょうか。

(2)機関投資家向けには「事業」としての社会貢献活動が大事

やはり、大口取引である機関投資家が注目するのは、単にボランティア活動や地域貢献活動ではなく、経済的なメリットを得られる「事業としての社会貢献活動」を想定しているはずです。特に、今までは、自社の強みで社会課題の解決をしていこうといった、どちらかといえば企業にとってみればリスクが低い「インサイドアウト」的な視点で社会貢献活動をする企業が多かったのです。ただし、最近では、ピコ太郎の動画でも話題になりましたが、SDGsの17の目標169のターゲットのように、世界的な環境問題や社会課題に対して、攻めの「アウトサイドイン」的な社会貢献活動が重要視されてきています。企業から見れば、自社の強みではない部分での取り組みになるので、アンゾフの成長マトリックスのような新商品開発事業と同様に大きなリスクが伴うわけです。ただし、その新規事業が成功すれば社会課題が全て解決されるまで、そのビジネスは続くことになるので、機関投資家からみれば、企業のサステナビリティ戦略として評価されるはずなのです。このように機関投資家の視点では、企業価値に繋がる社会貢献活動が投資を呼び込むことかどうかの判断材料になります。

(3)個人投資家向けには「信頼を獲得する」ための社会貢献活動が重要

今まで見てきたように、機関投資家は、事業としての社会貢献活動を実施しているのかといった視点が強いのですが、その逆に、個人投資家は、圧倒的に機関投資家よりも見ている企業データが少ないので、単純に「その企業を応援したいかしたくないか?」といった主観的な考えで投資するケースが多いと思われます。そういう意味では、事業としてよりも、企業ブランディングに重点を置いた戦略を取ることが有効になってくるのです。どうしても、グローバル企業と比較すると、事業としての社会貢献活動に金と時間を投資することができない中小企業は圧倒的に不利な状況です。ただ、個人投資家狙いの場合には、グローバルではない、地域に本社を置く上場企業でも、地域住民に対しての「清掃活動」「ボランティア活動」などが、投資を呼び込む大きなチャンスになるのです。そういった意味では、今後、国内で個人投資家の投資金額が増えることはESG投資に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

まとめ

国内の投資家は、外国人投資家や金融機関、個人投資家など様々な考え方があるわけです。だから一概に、「CSVは投資に繋がるが、地域のボランティア活動は投資に繋がらない」といったことはいえないわけです。投資を呼び込むターゲットをどこに置くのかによって、企業が取り組むべき社会貢献活動というのは、全く違ってくるわけです。そして、一つ言えることは、機関投資家であれ、個人投資家であれ、企業の社会貢献活動がステークホルダーにしっかりと伝わっていることが大切なのです。そういう意味ではCSRコミュニケーションは、ESG投資にとって、益々大事になってくる時代になってきたんですね~。だから、CSRコミュニケーション協会の正会員になるのも意味があるんだと思います(笑)

さて、そのCSRコミュニケーション協会ですが、10月2日に上場企業400社のモバイルサイトのCSRコミュニケーション評価ランキングを発表するそうです。私も夏休みを削って、400社全てのモバイルサイトを拝見させて頂きました~。とても面白い結果が出ているので是非注目してくださいね!では、また来月会いましょう!

※本投稿は個人の見解であり所属する組織・団体を代表するものではありません。

特典多数な正会員制度の詳細はこちら

執筆者:猪又 陽一

東京商工会議所「eco検定アワード」審査委員、2016年第三者意見執筆企業(南海電鉄、アマダホールディングス、リケンテクノス)。早稲田大学理工学部卒業後、ベネッセコーポレーション入社。その後、外資系ネットベンチャーやリクルートエージェント等で新規事業立ち上げ後、大手環境戦略コンサルティング企業に合流。環境・CSR分野における戦略・実行、コミュニケーション、教育など幅広く従事。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」、「CSR JAPAN」をプロデュース。著書:『CSRデジタルコミュニケーション入門』(インプレスR&D、共著)

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