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企業の積極的なコミュニケーションは行政に通じるのか

  • 2017.8.28

行政を市民がチェックする

筆者の会社がある自治体では、市の環境に対する取り組みを、市内に住む専門家、住民、そして市内で活躍する事業者それぞれの代表によって構成された委員会が評価することになっています。つまり、市役所が運用している環境マネジメントシステムを市民の代表者たちで評価しようという会です。この取り組みは10年ほど前から続いていて、筆者が勤務する会社も2年ほど前から事業者代表として参加しています。

本記事では、その時に感じた、企業と自治体のコミュニケーションについて書きたいと思います。

悩みを抱えている行政

ここからは、筆者の同僚であり、委員会参加者の1人であるA氏からヒアリングした話をします。

A氏が監査したのは、市内の公園整備や地区の自治体活動を支援する部局でした。その部局では、過疎化が進んだことで廃校になった小学校のプールを、市内の小学生や地域住民が自由に見学できるビオトープとして再利用しようと精力的に取り組まれていました。しかし、予算の関係で計画は途中で頓挫。工事をしようにも予算がないとどうにもなりません。

その時にA氏の監査が入ったそうです。各部局が掲げる環境改善計画は、市のホームページに掲載されることになっていて、取り組み結果を含め計画内容を誰もが閲覧できるようになっています。担当者にとってはこの上ないプレッシャーです。このような理由もあり、局の担当のK課長は溜息混じりにA氏に実情を訴えました。「自分たちだけではもう手詰まりなんです…」と。

市役所の人たちと汗を流しながら協同作業

それから半年後、筆者はジャージ姿で廃校になったプールの前に立っていました。隣には同僚のA氏、その横にはA氏の監査の際に窮状を訴えた市職員のK課長とその部下の方たちもいらっしゃいます。そこにいたみんなが普段のスーツ姿からは想像もつかないラフな格好。「それじゃあ、さっそく始めますか!」とK課長。イキイキとしたその声に「あのときのKさんと同じ人とは思えない!」とA氏も驚いていました。

ビオトープに生息している動植物の移し変え、配管にこびりついた苔取り、プール掃除など、行政の人たちとともに汗を流しながら作業に取り組みました。結局、工事はこの日を含め4日を要し、筆者の会社は人手だけでなく修復資材も援助。そして、完成したビオトープは市のホームページや地域のコミュニティ誌に掲載されるだけでなく、市が政策したビデオの動画にもアップされました。市の環境保全計画の達成と地域社会の学びの場を維持することに貢献できたのです。

市役所の別の担当者は言います。「役所というのは外部の人たちとのコミュニケーションが苦手なんですよね」と。これは本当にもったいない話です。困っている人たちがいて、ある程度余力のある企業がいるのに、課題解決のコミュニケーションをする機会がないのですから。今回は、A氏の「それなら市内の企業に協力を依頼してみては?」の一言で、筆者の会社に声がかかり、改善が実現しましたが、同じようにちょっとしたコミュニケーションで道が開けるケースは多いと思います。

コミュニケーションが企業価値向上につながる

社会と企業の関係がより強く求められる現在にあっては、地域社会とのコミュニケーションは非常に重要です。従来、行政とのコミュニケーションといえば届出の提出や相談、さらには行政指導といったものが主流でした。こういったことは、必要だから今も続いているのでしょう。続いているのにはそれなりの理由があると思います。

しかし、時代は変わります。かつての「常識」は今の常識とは限らないという意見も、一方では存在します。そして、今回のケースは後者になるでしょう。これからは行政に対して攻めのコミュニケーションをすることが企業には求められます。

改めて、市のホームページをよく見ると、「市民、事業者、行政の各主体が連携し…」とあります。同じようなことを謳っている行政機関は多いと思います。そして、これは企業にとっては大きなチャンスです。コミュニケーションによって行政・地域が抱える課題を認識してそのニーズに応えていくことは、企業本来の目的である社会的責任を果たすことにもつながり、企業価値の向上にもつながります。

今回は行政との事例をご紹介しましたが、今一度、自分たちをとりまくステークホルダーとの関係性、コミュニケーション方法を見直してみるのも良いかもしれません。

寄稿:Takada Yuriko

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執筆者:ブログ編集部
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