
社内への情報発信
CSRの情報発信やコミュニケーションというと、多くは社外のステークホルダーをイメージするでしょう。
最近のBtoB・製造業などの企業では、自社の従業員も想定読者と明言するところが増えています。しかしながら、イントラネットや社内報にCSR情報の一部を掲載する“だけ”で情報発信した気になっている、CSR担当者の方も多いです。実際に情報が届いていないにも関わらず、です。
本気で広報などにかけあい社内報に大きく載せるとか、イントラネットの一番閲覧されるエリアへの掲載、情報が従業員に届いているかヒアリング実施、などを継続している企業もごく稀にいますが……CSR専任ですらないのにそこまで対応できないというのも本音でしょう。
そもそも、では、従業員はどれくらい自社のCSR情報を知りたいと考えているのでしょうか。ある調査を紹介させていただきながら、まとめたいと思います。
リージャス グローバル ビジネス調査
・世界平均の43%(日本の回答者の34%)が「2つの企業から同時に仕事のオファーがあった場合、慈善事業を行っている企業の仕事を行いたい」と回答
・世界平均の40%(日本の回答者の44%)が「企業はもっとCSR活動に注力すべき」と回答
・世界の半数近くである47%(日本の回答者の26%)が「所属する企業が慈善活動に関わっていることは重要だ」と回答
・世界平均の29%(日本の回答者の25%)が「自社のCSR活動についてもっと情報を開示してほしい」と回答し、34%(日本の回答者の17%)が「自社の慈善事業についてもっと情報を開示してほしい」と回答
(参照:リージャス グローバル ビジネス調査 第14弾結果発表)
10〜30%の壁
この調査では、企業は社会貢献への意識を持つとともに自社の慈善事業やCSR活動について従業員に知ってもらい、参加する機会を提供するのがよい、としています。
この調査は全世界の4万人のビジネスパーソンの調査なので、日本固有の傾向というわけではありません。しかし調査の数値を見ていただきたいのですが、日本の回答者でも2割程度の人たちは「社会貢献に興味があり、自社もより情報開示をしたほうが良いと思う」としている事実です。
官公庁の社会貢献意識調査や民間調査の行動調査や意識調査をみても、この「10〜30%」というレベルは一つの分岐点になると思っています。
どうしても、CSR報告書、社会・環境報告書、統合報告書などでも社外のステークホルダーが想定読者となるケースが多いですが、インサイドのステークホルダーに向けた情報発信も意識しないと、「ウチの会社はこれだからダメなんだ」なんて思われてしまうかもしれません。
CSR関連でも特に「人」に関する領域は、日本でもどんどん法制化されていますので、ワークライフバランス、ダイバーシティ、ディーセントワーク(働きがいのある仕事)、などの非財務情報は社内外に、積極的に情報開示していくのがよいのかもしれません。
社会も従業員も企業のCSR関連情報を求めている。時代の動向を考慮し、社内でCSRコミュニケーション施策をしっかり立てていきましょう。
執筆者:安藤 光展
サステナビリティ・コンサルタント
専門は、CSR、SDGs、サステナビリティ情報開示。著書は『創発型責任経営』(日本経済新聞出版、共著)ほか多数。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。大学卒業後、ネット系広告会社などを経て2008年に独立。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションに、大手上場企業を中心にサステナビリティ推進支援を行っている。