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CSR報告におけるトップメッセージの品質測定

  • 2017.7.1

トップメッセージの評価

先日、当協会のアドバイザーである猪又さんの記事「トップメッセージでやってはいけない3つの掟」は、すごく“腹落ち”したものでした。

さすがに「トップメッセージは重要ではない」と思っているCSR報告書・制作担当者はいないでしょう。でも、担当者レベルでは社長の時間を取るのも難しいので、現実的には「こちらでアピールしたい内容」をそれっぽく書き、社長になおしてもらう、と。

それでも機関投資家からのプレッシャーでESGに関するトップメッセージはさらに重要になるともいますが、ここで、本気で作り込みができる大手企業はどれくらいあるか。

というわけで、本記事では国際ガイドラインも参考にしながら、トップメッセージの開示項目について考えてみます。

GRI:上級意思決定者の声明

例えば、GRIスタンダードでは、以下の開示をせよと示しています。

組織とサステナビリティの関連性、およびサステナビリティに取り組むための戦略に関する、組織の最高意思決定者(CEO、会長またはそれに相当する上級幹部)の声明

そして、その内容と開示情報の推奨ポイントは以下のようにしています。(抜粋して意訳)

2.1.1 トリプルボトムラインへのインパクトに関する戦略
2.1.2 国際ガイドラインの尊重と関連性
2.1.3 自社に影響を与える社会動向
2.1.4 報告期間中の主要な出来事、成果、失敗
2.1.5 目標に照らしたパフォーマンスについての見解
2.1.6 組織の今後2〜5年の目標に関する展望
2.1.7 組織の戦略的アプローチに付随する事項

いわれてみれば確かに、という項目ばかりなので大きな異論はないかと思います。

トップメッセージの評価のポイント

1、戦略性(ミッション・ビジョン)
2、当事者意識(独自性)
3、数値目標(KGI/KPI設定)
4、時間軸(PDCAサイクル)
5、両面提示(リスクと機会)

GRIスタンダードや他の評価期間の評価項目などを含めて私なりに整理すると、例えば上記のような項目が必要だろうと思います。もちろんこれらに付随して関連した項目がCSRコンテンツ評価につながるのだと思います。

私は、毎年100社以上のトップメッセージを読みますが、個人的な評価指標として「文字量」があるように感じています。

そもそも「CSR報告書は文字が多くて読みたくない」という人がトップメッセージを一通り読むとは思えません。その会社のCSRに興味がある人が、PDFなり冊子なりを手元に取り寄せて読むわけです。

質より量という二項対立論ではなく、ページ数が多ければそれだけ冊子(ウェブページ)の中でも、予算と時間をかけて作成しているコンテンツ(=重視しているコンテンツ)と予想できます。本気度を感じるといいますか。

さらに言ってしまうと、CSR報告書のダイジェスト版はトップメッセージだけでもいいと思うくらいです。社長が財務/非財務の全体を説明し、会社の過去を振り返り未来を語るのです。細かいデータや戦略に関しては、ウェブコンテンツで開示すればいいのです。

これは極端な話ですが、読み物(≒雑誌)として読んでもらいたいなら、これくらいしないと成果は難しいと思います。

まとめ

大手企業のトップが自身で原稿を書くことは現実的に難しいと思いますが、だからこそ、CSR報告書制作の担当者のヒアリング力が試されます。原稿作成時にどれだけトップの“本当の声”を入れられるか。多くの企業が妥協しているプロセスを実施することができるのか。

情報が溢れる現代社会では、情報は発信した瞬間に埋もれてしまいます。コーポレートサイトにアーカイブできるとはいえ、能動的に情報を取りに来るステークホルダーにしか情報を届けられないのであれば、その価値も半減してしまうことでしょう。

読者(ステークホルダー)が“読みたい”と思えるトップメッセージとはどのようなものでしょうか。2017年発行分には待ち合わないかもしれませんが、社内でよく検討されることをお勧めまします。

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執筆者:安藤 光展

CSRコンサルタント
専門はCSR領域のコミュニケーション、ステークホルダー・エンゲージメント、企業評価。著書は『CSRデジタルコミュニケーション入門』、『この数字で世界経済のことが10倍わかる〜経済のモノサシと社会のモノサシ』など。2009年よりブログ『CSRのその先へ』運営。大学卒業後、インターネット系広告代理店などを経て2008年に独立。以降、企業のCSR/社会貢献領域のコンサルティング業務を中心に活動中。1981年長野県生まれ。

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